本記事では、日本国内のさくらんぼの収穫量 都道府県ランキングを詳しく解説します。使用データは、農林水産省が発表した「令和5年産 作況調査(果樹)」の確報(2024年3月公表)に基づいています。さくらんぼの収穫量上位県の特徴に加え、前年との比較、世界主要国との生産量比較、栽培上の課題や今後の展望についても幅広く紹介します。
甘くてジューシーな味わいが人気のさくらんぼは、初夏を代表する果物のひとつ。全国的に栽培はされていますが、生産量には地域差が大きく、特に山形県が圧倒的なシェアを占めています。その背景や理由を含め、最新データをもとに解説していきます。
さくらんぼの収穫量ランキング【都道府県別】
順位 | 都道府県 | 収穫量(t) | 全国シェア(%) |
1位 | 山形県 | 13,700 | 75.7% |
2位 | 青森県 | 1,130 | 6.2% |
3位 | 山梨県 | 624 | 3.4% |
4位 | 北海道 | 555 | 3.1% |
5位 | 秋田県 | 353 | 2.0% |
6位 | 岩手県 | 264 | 1.5% |
7位 | 長野県 | 240 | 1.3% |
8位 | 福島県 | 210 | 1.2% |
9位 | 新潟県 | 85 | 0.5% |
10位 | その他 | 285 | 1.6% |
合計 | 全国 | 18,446 | 100% |
※出典 農林水産省「作況調査(果樹)令和5年産」確報(2024年3月公表)
日本のさくらんぼ生産は山形県が圧倒的なシェア(約76%)を誇るのが最大の特徴です。2位以下を大きく引き離しており、「佐藤錦」などのブランド力や気候・土壌条件の適性がその背景にあります。東北地方が上位を占める傾向は変わらず、気温の寒暖差や栽培技術の蓄積も重要な要因となっています。
さくらんぼの収穫量を前年比較
令和5年産のさくらんぼ収穫量(全国合計)は18,446トンで、前年(令和4年産)の19,300トンに比べて約4.4%減少しました。以下は、主要産地における前年との比較です。
主要県の収穫量 前年比(令和5年 vs 令和4年)
- 山形県 ▲約700トン(14,400t → 13,700t)
- 青森県 微減(約1,150t → 1,130t)
- 山梨県 やや増加(約590t → 624t)
- 北海道 微減(約580t → 555t)
- 秋田県 横ばい〜微減
全体としては減少傾向にありましたが、一部地域では天候条件が良好だったことで収穫量が増加したケースも見られました。特に山形県では、開花期の低温や着果不良、局地的な雹(ひょう)や強風の影響が生産にマイナス要因として働いたと分析されています。
収穫量の変動は自然条件に大きく左右されるため、気象災害に備えた安定生産体制の強化が今後の重要課題となっています。
日本のさくらんぼ生産量の実態
日本国内におけるさくらんぼの年間収穫量はおおよそ1.8万トン前後で推移しており、果物全体の中では中規模クラスの生産量です。以下は、代表的な果実との比較です。
果物 | 年間収穫量(目安) |
りんご | 約70万トン |
みかん | 約55万トン |
ぶどう | 約16万トン |
もも | 約11万トン |
さくらんぼ | 約1.8万トン |
このように、さくらんぼは出荷期間が非常に短く、生鮮品としての取扱が中心であることから、他の果実と比べて収穫量自体は限定的です。
とりわけ山形県では、全国の約76%を占める生産量を背景に、「佐藤錦」「紅秀峰」などのブランド化が進んでおり、贈答用高級果実としての地位を確立しています。一方で、他県の多くは小規模で観光農園・直売などを軸にした地域的な栽培が主流です。
加工用需要は限定的であり、生食用がほとんどを占めるのも、さくらんぼの特徴と言えるでしょう。
さくらんぼの世界収穫量ランキング
以下は、FAO(国際連合食糧農業機関)の最新統計(2022年)をもとに作成した世界のさくらんぼ生産量ランキングです。日本も含めた主な生産国のデータを掲載しています。
順位 | 国名 | 生産量(トン) | 備考 |
1位 | トルコ | 約850,000 | 世界最大の生産国 |
2位 | アメリカ合衆国 | 約350,000 | カリフォルニア州など中心 |
3位 | イラン | 約180,000 | 中東の主要産地 |
4位 | チリ | 約155,000 | 南半球、輸出に強み |
5位 | ウズベキスタン | 約150,000 | 欧亜の新興産地 |
6位 | 中国 | 約130,000 | 近年急成長 |
7位 | 日本 | 約18,000 | 高品質・少量生産 |
※出典 FAOSTAT(2022年)
世界的に見ると、トルコが圧倒的な生産量で世界一の座を占めています。アメリカやチリなども大規模な輸出国として知られ、特にチリ産は日本市場でも輸入実績があります。一方、日本は量としては少ないものの、品質や品種改良、手作業での選果などに特化した高付加価値型の生産国です。
また、日本のさくらんぼは主に国内消費向けに流通しており、輸出は限定的です。しかしながら、近年は東アジア圏への輸出拡大を見据えた高級果実戦略が徐々に進んでいます。
さくらんぼの栽培状況と収量向上への課題
栽培地域と方式
さくらんぼは主に東北地方や冷涼な中山間地域で栽培されており、代表的な産地には山形県、青森県、秋田県、北海道などが挙げられます。寒冷地での露地栽培が主流ですが、近年では収穫期の調整や品質向上を目的に、雨除け施設やハウス栽培も導入が進んでいます。
代表的な品種
- 佐藤錦(さとうにしき):全国的に最も流通量が多く、甘味と酸味のバランスが特徴。
- 紅秀峰(べにしゅうほう):糖度が高く、肉質がしっかりしており近年人気。
- 南陽(なんよう)、紅てまり など、地域独自の品種も多数存在。
山形県ではこれらの品種を中心にブランド化・高級化戦略が取られています。
栽培上の課題
- 霜害や雹(ひょう)被害 開花期〜結実期に霜や強風、雹などの気象災害が発生すると、果実品質が著しく低下します。
- 病虫害の発生 灰星病やモモハモグリガなどの害虫被害が増加傾向。
- 収穫期の短さと労力 6〜7月のごく短期間に集中するため、人手の確保が課題。
- 担い手不足と高齢化 特に中山間地域では深刻な労働力不足が生産維持を難しくしています。
収量向上に向けた取り組み
- スマート農業の導入 温度・湿度管理や収穫予測AIの活用が一部で進行。
- 若手就農者への支援強化 各自治体による就農研修・補助制度も拡充。
- 品種改良による耐病性・晩成型の開発 気候変動リスクへの対応として重要視されています。
安定生産と品質保持を両立するためには、技術革新と若手育成の両輪が不可欠です。
日本産さくらんぼの将来性
日本産さくらんぼは、今後ますます高品質果実としてのブランド価値の向上が期待される果物です。特に、地域ブランド化・輸出拡大・スマート農業の導入など、未来志向の取り組みが進行中です。
まず、山形県の「佐藤錦」「紅秀峰」などは、すでに国内外で高級フルーツとしての地位を確立しています。これらを軸とした地域ブランド戦略は、今後も地域経済活性化の柱として機能するでしょう。
さらに、さくらんぼ狩りなどの観光農園との連携も重要なポイントです。季節性の高いさくらんぼは「旬の体験型コンテンツ」としての価値も高く、インバウンド観光客の誘致にもつながります。
加えて、近年注目されているのが6次産業化の推進です。さくらんぼジャムやリキュール、ドライフルーツなどの加工品開発が進んでおり、生鮮品だけに頼らない安定収益構造の構築が求められています。
そして、スマート農業の技術導入によって、省力化・高品質化が進みつつあります。AIによる収穫適期の判定や、病害予測モデルの活用、ドローン防除などが、すでに実証段階に入っています。
これらの動きを通じて、日本産さくらんぼは「量より質」を重視する市場の中で、高付加価値型農業の象徴的存在として注目され続けるでしょう。
さくらんぼとは?|栄養価・品種・食べ方・特徴まとめ
さくらんぼは、バラ科サクラ属に分類される果樹で、果実は初夏を代表する味覚として親しまれています。日本では主に「セイヨウミザクラ(西洋実桜)」の品種が栽培されており、果肉が柔らかくジューシーで、爽やかな甘味と酸味のバランスが特徴です。
果実の可食部は果肉で、ビタミンCやカリウム、βカロテン、アントシアニンなどの栄養素を含み、抗酸化作用や美肌効果、むくみ対策などの健康効果が期待されています。
代表的な品種には、甘味と酸味のバランスに優れた「佐藤錦」、大粒で糖度が高く日持ちの良い「紅秀峰」、果肉がしっかりした「紅てまり」などがあります。これらは山形県を中心に栽培され、高級フルーツとして贈答用にも広く利用されています。
消費スタイルとしては、生食が圧倒的に主流ですが、近年はジャムや洋菓子、果実酒、ジュースなどの加工品への展開も進んでいます。また、観光農園でのさくらんぼ狩り体験も人気が高く、地域振興の一環として注目されています。
さくらんぼに関するよくある質問【FAQ】
Q1 日本のさくらんぼの生産量は?
A1 年間約1万8,000トン前後で推移しており、果実の中では中規模の生産量に位置づけられます。
Q2 さくらんぼの主な生産地は?
A2 山形県が圧倒的な産地で、全国の約76%を占めています。その他には青森県、山梨県、北海道などでも栽培されています。
Q3 さくらんぼの収穫量は前年と比べてどうか?
A3 令和5年は前年より約4.4%減少しました。主な要因は開花期の低温や局地的な気象被害です。
Q4 世界一のさくらんぼ生産国はどこ?
A4 トルコが世界最大のさくらんぼ生産国で、年間約85万トンを生産しています。
Q5 日本はさくらんぼを輸入しているのか?
A5 はい、特にチリやアメリカから輸入されています。国産が少ない冬季や早春などに市場に出回ります。
Q6 さくらんぼの価格はどのくらいか?
A6 一般的な店頭価格は100gあたり300〜800円程度。高級品種や贈答用は1箱5,000〜1万円を超えることもあります。
Q7 さくらんぼは家庭で栽培できるか?
A7 栽培は可能ですが、気温や受粉環境の管理が難しく、家庭栽培では収穫が安定しにくい果樹です。鉢植え用の矮性品種も市販されています。
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